暑い。

とにかく暑い。

初夏らしく爽やかな風が吹いているものの照り付ける太陽は肌をさす。

もとから紫外線に強いほうではない。

むしろ弱いほう。

今日帰ったら肌が赤くなっているのは確実だろう。



(…こんなことならバスケ選ぶんだった)



あれなら体育館の中で行われる競技だから紫外線に曝される率はだいぶ低い。

だけど自分はどっちかっていうとバスケよりこっちのほうが得意なんだ。



「お前が羨ましい…」



ぼそっと隣の奴に呟いてみると相手は意味が解らないとでもいうように眉根を寄せた。



ちゃん脈絡なさすぎ」


「…」



半分怒られたような感じの声音。

こんがりやけた小麦色の肌をもつそいつをじーっと見て、俺は息を吐いた。

いかにも紫外線に強そうな肌。

対する俺は透き通るかのような白い肌。

ばっちり母さん譲りで、これもまた女子達にうらやましがられるひとつ。

そして白いゆえに紫外線に弱い。

エルスマンの腕にピタリと手を乗せて、彼と視線を合わせる。



「この肌がほしい。」


「え、なに抱いてほしいの?」


「・・・。」



どう考えても見当違いな方向に答えを導き出したエルスマンに

無言で裏拳を顔面にお見舞いして、俺は目の前の競技に視線を戻した。

広いグランドを白と黒のボールを蹴って、奪い合いながら縦横無尽に走り回る子達。

子達。っていうのは両チームとも1年生だから。

この試合は終われば次は俺たちの番。だからここで待機中。

そうじゃなきゃこの炎天下の中待機とかしてない。日陰にいる。

別に不健康って言われてもいい。だって紫外線に弱いんだから。

隣でエルスマンが痛そうに顔を抑えて、眉をしかめながら俺を見た。



ちゃんらんぼー。」


「おかしなこというエルスマンが悪い。
 お前の思考回路はそっちの方向にしか向かないのか?」



色気あるから。」


「意味がわからない!」



へらりと笑っていわれて言葉に俺は目力を強くして答える。

けれどエルスマンはただ笑って返すだけで、

多分子犬がきゃんきゃんほえてる程度にしか思っていないと思う。

身長もそれなりにエルスマンと同じくらいあって、お子様な顔つきでもないのだから

そういった扱いはかなり不服。

そんなことを考えているといらいらが募ってくる。



「そもそもなんで球技大会みたいなものがあるんだ。」


「体育が必要だからだろ?、体育得意なんだからいいじゃないか。」


「得意でも外でするのは嫌い。」



きっぱり否定してやるとエルスマンは困ったように微笑んだ。

体動かすのは苦手じゃない。

たいてい平均よりいい記録を出せるし、そんなに苦しんだ覚えもない。

けれどあまり体育という授業が好きじゃない。

というか太陽の下で激しく運動するのがしんどい。



(・・・・俺、おっさん?)



世間では青春真っ盛りと言われてもおかしくないはずだけど、思考がやけにじじくさい。

自分の額を手でつかみ、深く息を吐く。



「・・・俺、恋とかしたほうがいいかな。」


「だからは脈絡がなさすぎなんだって。」



いやそうにいうエルスマンを横目で見てから俺は視線を再びグランドのほうへ向けた。



(青春ってなんだろう・・・。)



脈絡をエルスマンに話してやる気はない。

いちいち説明するのもめんどくさい。

俺がたまに不思議な子って言われるのは

こんなふうに頭の中で話を完結させちゃって結果だけ言葉に出すから。

過程を言葉に出すのが面倒なんだ。


グランドでは1年生が元気そうに走り回っている。

若いなー。とか頭の端で考えつつ

特に誰を追うとでもなく視線をさまよわせていると知っている顔が目に入った。



「あ、ザラだ。」


「は?ザラってあのアスラン=ザラ?」


「そうそう。ほら。」



俺が指差した先にはかなり優れた動きをしている闇色の髪の子。

よく見てみると応援の女子の数が異様に多い。

それの原因は多分というか絶対ザラのせい。

ザラは女子達にかなり人気があるらしい。



、お前が他人見つけるなんて珍しいな。」


「え?あー・・・そう?」


「あぁ。お前あんまり人に興味もたないだろ。」


「んー・・・あれかな。ザラはヤマトと仲いいから?」



「ヤマトってお前のおふくろさんが新しく連れてきた男?」


「そ。」



端的に答えるとエルスマンも大して興味がなさそうにふーん。と答える。

エルスマンはうちの家庭環境を割りとよく知っている。

学校で一番普通に話してるのはエルスマンが多いから必然的にそうなったのだけど。



ジュールともよく話すけど、なぜかジュールが喧嘩越しになってくるのと

生徒会に入れといわれて俺が逃げるからゆっくりとだらだら話すなんてことはあまりない。

だから今学校で一番身近に感じる人物っていったらエルスマンのことなのかもしれない。

そんなことを考えながらじーっとエルスマンの顔を見上げるとエルスマンは小さく首をかしげた。



なんでもない。と小さく首を振って俺は再び視線をグランドに向ける。

そしてそんなジュールは生徒会のお仕事でただいま本部に詰めている。

バスケに登録はしてあるから後でそのときになったら応援しに行こうと思う。



ザラがいるならと思って先ほど話題に上ったチョコレートのような色の髪を持つ少年を探したが

グランドにはヤマトの姿を見つけることはできなかった。

俺が見逃しているのかそれとも本当にいないのか。多分後者。



電光掲示板があらわしていたロスタイムの時間が0になり、抜けるように青い空に高らかにホイッスルが鳴り響く。

どうやらザラたちのクラスが勝ったらしい。

お互い整列しあって挨拶をし、体操服の袖で顔の汗をぬぐいながらこちらに向かってくるザラに俺は近づいた。

そんな俺をエルスマンが意外そうな顔をして見ていた。



「ザラ。」


「あれ、先輩。俺のこと見ててくれたんですか?」


「次が俺のクラスが試合なだけだ。」



声をかけるとにっこりと完璧な笑みを浮かべてザラは答える。

なんだか引っかかる単語があったので俺はわずかに眉を寄せ小さく首を振った。

そしてその動作をした瞬間になぜかザラの表情が少し不機嫌そうなものになる。

それが居心地が悪くて話題を変えるというか、本来の目的を果たすために俺は再び口を開く。



「ヤマトは?バスケなのか?」


「キラなら保健室です。」


「・・・怪我でもしたのか?」


「いいえ。サボりです。」



あっけらかんと言われた言葉に俺は口の端を引きつらせた。

サボり・・・いいな、俺もサボりたい。

ヤマトはやっぱり少し不真面目なところがあるらしい。

母さんの働いてる場所にいる。ってことはまぁ、そうなんだけど。

ザラもなんだか慣れてるような口調だったし。頻繁にサボるんだろう。



「それより、次先輩出るんですね。
 俺ここで応援しますよ。」


「・・・しなくていい。」



そんなこといわずに。と微笑んだザラの顔が妙に楽しそうだった。



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2007/09/27

あとがき

私もよくやります。
頭の中で過程考えて結果だけ口に出す。これあまりよくない 笑 
今度ザラ視点で書きたいなぁ。