始めてみた時は線の細いか弱そうな子。

そう思っていた。



さん。」



スパナ片手にスカイグラスパーの整備をしていた俺の手元が突然翳った。

ふと顔を上げてみるとそこにあったのは

チョコレートのような色の柔らかいさらさらの髪とアメジストのような大きな紫の瞳をもつ少年だった。



「相談があるんですけど。」


「おー。なんだ?」



バインダーを片手に柔らかく目を細める彼に俺はへらりと笑って返した。

そうすると彼はあたりに視線をまわしてから俺に視線を止めて軽く首を傾げて見せた。



「ちょっとややこしいので僕の部屋のパソコン使ってでいいですか?」


「・・・またストライクの接地圧とかかえたのか?」



俺が少し呆れたというような声を出しながらそういうと彼は眉を下げながら微笑んだ。

それは肯定の意味が含まれているのだと感じ俺は内心溜息をつく。

決して差別してるわけじゃないんだけど、この少年はコーディネーターで俺よりはるかに頭がよく、

ものすごいプログラムの組み立て方であの巨体を動かしている。

そして、なぜかこの少年はこの艦では新米である俺ばかりに相談を持ちかけてくる。

その度に頭を悩ませているのが現実で、なぜこの少年が俺に相談するか不思議でたまらない。

多分あんまり参考にもなってないとは思う。だから余計不思議。



「あ゛ー・・・スカイグラスパーの整備終わったら行くから部屋でまっててくんねぇ?」



それまでに接地圧に関する資料を集めていこうという魂胆もあり、

冷や汗をたらしながらそういうと彼はにっこりと微笑んで頷いた。



「わかりました。じゃぁお待ちしてます。」



頷かれた事にほっとしながら俺は視線を彼からスカイグラスパーに戻した。

彼が離れていくのを気配で感じ、俺は回りに視線を移した。



(よし、いない。)



実はあとは一本ねじを締めなおすだけで整備は終わり。

嘘をついているようで後ろめたいけれども、

彼に迷惑を掛けたくないという一心でやっているのだからそこらへんは多めにみてほしい。

整備士達の溜まり場となっている格納庫の一室に入り、

俺は接地圧に関する資料を片っ端から引っ張り出した。



「あら、が勉強なんてめずらしいわね。」


「・・・。」



ファイルを引っ張り出しているとなじみのあるがここで聞くには珍しい声が聞こえて

俺は眉を寄せて声のしたほうを向いた。

そこにはみごとな豊乳を持つ、自分とどこか似た顔立ちの栗色の髪の女性が扉あたりに立っていた。



「あなた、基本的に実践派じゃなかったかしら?」


「しょーがねぇーの。
 キラ、俺の想像の範疇超えた考えすんだよ。
 だから迷惑かけないようにだな・・・って邪魔しに来たのかよ、姉貴。」



うだうだと説明している間に明らかにこれが時間の無駄遣いであると感じ

俺は姉であり、この艦の艦長であるマリュー=ラミアスに言葉を投げかけた。

姉貴は口元に手を持っていってクスリと微笑み、俺に近づいた。



「違うわよ。あなたの様子を見にきただけよ。
 その・・・オーブから無理矢理つれてきたようなものじゃない?」


「・・・いいよ、それは気にしなくて。」



目線をファイルに落としながらそういうと姉貴は痛そうな表情をしてみせる。


別に恨んじゃいない。

人員が足りないから。とそういわれて戦争に関わりたくないと一度は断った。

だがそれは戦争から目をそむけているだけだと批難され

半分喧嘩ごしになりつつ、じゃぁ乗ってやると俺が逆切れした結果今に至る。


しかし戦争から目をそむけていただけだというのはこの艦に来て痛いぐらい分かった。

だから良い経験になっているのだと思う。多分。



「むしろ・・・ありがとうって言いたいかも。」


・・・。」



姉貴は眉を下げて俺の名を呼ぶ。

俺はぱたりと手元のファイルを閉じて、姉貴に向け笑顔をつくった。



「じゃぁ、俺行って来るわ。」



姉貴が何かを言おうとするのを振り払うように俺は足早に格納庫を後にした。

キラが待っている部屋に向かうまでに何人かとすれ違う。

いくつかのファイルを抱えるようにして歩いている俺を不思議そうに見る彼らに

軽く会釈をしながら目的の場所へと足を進めた。


扉の前までたどりつき俺は天上を見上げてから小さく息を吐く。

気が進まない。俺が何か力になれることがあるのだろうか。

しかしここで立ち止まっていても埒があかないのは事実で

俺は暫く頭の中をぐるぐるとさせてから足を一歩出すことに決めた。



「わ、わりぃ、キラ。待ったか?」



扉の前で立ち止まっていたことを悟らせないように

自然な感じを装ってみたがソレは声に出したところで失敗に終わった。

簡易ベットの上に座っていたキラが楽しそうにくすくすと笑みを浮かべた。



「どうしたんですか?」



正直に言うのもなんだし、嘘をつくのもなんだし。

俺はタダ無言でキラから目をそらした。

頬が熱いから多分少なからず顔は赤くなっていると思う。



「俺のことはいい!接地圧がどうなんだ?」



乱暴だと怒鳴られても仕方がないと思うほど

俺は机に大きな音を鳴らせて書類を置いた。

キラはくすくすと微笑みながら、ベットから立ち上がり俺に近づいてきた。


俺とキラの体は大体一回り違う。

がっしりとした肩と180以上身長があるどっちかっていうと男くさい俺に対して

キラは女かと見まごう程綺麗で華奢だと思う。


本当に至近距離まで近づいてキラは俺を見上げるようにして首を傾げた。

長い睫毛がアメジストの瞳に影を落として妙な色気がかもし出された。

それに思わず反応してしまいごくりとつばを飲み込み、キラが柔らかく微笑み唇を動かした。



「可愛い・・・。」


「・・・は?」



思わず聞き返してしまった俺を攻めないで欲しい。

だって俺の聞き間違えじゃなければ、キラの口から出た言葉は俺から程遠い言葉。

聞き間違え?いや、そうじゃないと困る。



「・・なんていった?」



冷や汗をたらしながら変な笑みを浮かべて聞く俺にキラはとても華やかな笑みを浮かべた。



「可愛いっていったんだよ、さん。」



駄目押しといわんばかりに決定打を食らわされ俺はあんぐりと口を開けた。


キラってこんなこという子だっけ?

少し控えめで優しい、か弱そうな子じゃなかったけ?


しかし今目の前にいる彼はそんなことなんて微塵も思わせないほど

どこか黒い空気を含んだ笑顔を浮かべている。



「初めて見たときからそう思ってたんだ。」



人差し指の腹で俺の顎を上に上げるような仕草をしてみせる。

アメジストの瞳に浮かぶのはどこか挑発的な色。

視線を逸らさなければいけない。だけど逸らせない。逸らすことを許されない。



「キラ・・・。」



どこか震える声で彼の名前を呼ぶと彼は軽く首を傾げて見せた。



「何?」


「俺は男だ。」


「もちろん知ってるよ?」


「か・・・可愛いなんてわけないだろ!?」


「そういうところが可愛いんだよ。」



なんだそれ!?

完璧とも取れる笑みを浮かべてキラはそう言う。いや、のたまう。

可愛い。っていうのは俺って言うよりかむしろキラに最適な言葉であって

キラの言葉は確実に間違ってると思う。



さんはね、僕の好みどまんなかなんだよ。」


「は!?」


「体おっきいのに、中身は純粋な子供のまま。
 そういう人って、とっても可愛いでしょ?」



ね?と俺の賛同を求めるようにそういうがこの子なにいってるんでしょう?

情報としては耳から入ってきているのだが、頭の中での整理がおいつかない。

しかもコレ誉められてるのかけなされてるのかも分からない。

自分より年齢下の子に子供っていわれてないか、俺?



「えっと・・・ちょっと待て、キラ。」


「うん?」


「とりあえずストライクの調整を・・・。」


「あぁアレ?アレは僕がさんと二人きりになりたかったからその口実。
 もう調整はすんでるから大丈夫だよ。」


「!?」



現実逃避に向かって、頭の中で情報を整理しようと思っていたのにそんな言葉を聞かされて

俺はさらに頭の中がぐちゃぐちゃになってあんぐりと口を開けた。

そんな俺をみてキラはうっとりとしたような微笑を浮かべた。



「可愛い・・・。大好きだよ、さん。」


「はいっ!?」



ごく自然な仕草だけどかなり唐突にキラは俺に抱きつきながらそういった。



「キラ・・・さっきも言ったけど俺、男・・・。」


「知ってるっていったよね?覚悟しといて。
 絶対に落として見せるから。もう一生離さない。」



抱きついたまま俺を見上げて

アメジストの瞳に危険な色を孕ませて。

そういう少年はとても綺麗だった。



俺が落ちてしまうのはきっとそう遠くない話。





(リクエスト:泉 様)



2006/07/13

アトガキ

偽キラ様ー。
書いててものすごく楽しかったです。
いいですよねぇ、黒キラ(笑)

折角いただいたマリューさんの弟っていう設定が
生かしきれてないような気がしてなりません
しかもまた甘くない(汗)すみません!
泉様、リク有り難うございました!