朝起きたら悪友の二人が俺の上に乗っていました。
「・・・?」
暫く状況を把握するのに時間がかかって何度か瞬きをしてから
とんでもない状況下に俺はいるのだと把握し、なんとかその状況から抜け出そうと体を起こそうとするが
俺と同じような黒髪のほうの友人がそれを許さなかった。
「やぁ、おはよう。シリウス。良い朝だね」
「どこがだ!なにさわやかに挨拶してんだよ!ジェームズ!!」
眼鏡の奥で緑色の瞳がそれはそれは楽しそうに微笑み、
その視線が鳶色の髪の友人に移った。
つられるようにして視線を移すと俺は一瞬息を詰めて動きを止めた。
なんだろう。ものすごく嫌な予感がする。
「・・・なんだよ、それ。」
「え?これ?見て分からない?」
後ろから黒い何かが出ている気がしてならない笑みを浮かべて
リーマスは手に持っているものを俺に見せ付けた。
名前は知ってる。というか知らないやつのほうが珍しい。
ただ、それはいまここにあってしかるべきものではない。
「シリウス。君はね・・・今日一日犬になってもらうから。」
そのリーマスの魔王のような発言に、本気になって抵抗したが
俺より体格は劣るとはいえ男二人の力にかなうはずもなく
ジェームズの楽しそうな笑みとリーマスの黒い笑みと共に
俺の首には赤色の首輪がはめられた。
「お前らっ!」
俺が飛びかかろうとするとジェームズたちは飛びのいて防御の形をとる。
しかし今は何よりもこの恥ずかしい物体を外すのが先だ。
首輪のベルトになっている部分に手をかけた、その瞬間指先にびりびりと嫌な衝撃が走った。
「・・・。」
無言で悪友二人を見てみるとリーマスがにっこりと笑い
ジェームズがアホっぽく笑っていて、その後ろでピーターがびくびくと震えていた。
つーか、ピーターいたんだ。わるい。気付かなかった。
「ソレね、キーワードをいわないと外れないようになってるから。」
ジェームズが俺の首についてるわっかを指差しながらただ楽しそうにいう。
なんだか体の奥底から怒りがふつふつと湧き上がってきて俺は体の横で両手を握り締め
悪友たちの方をにらみつけた。
「お前ら・・・身内まで悪戯のターゲットにするんじゃねぇよ・・・
さっさとキーワード云え!」
窓がびりびりと振動するほどの低い声でうなって見せると、ジェームズが僅かに口元を引きつらせた。
だが一人表情の変わらないヤツがいる。
あいかわらず人畜無害そうでいて黒い笑みを浮かべている目の前の御仁だ。
「おすわり」
「は?」
「キーワードだよ。」
その言葉を聞いて俺は飛びつくような勢いで首輪のベルトを緩めようとした。
が、再び指に走る刺激に俺は下からにらみつけるようにしてリーマスをみた。
「なに?」
「なに?じゃねぇよ。」
まったく悪びれない様子のそいつは小さく首を傾げて見せて
俺は腹のそこからふつふつと怒りが昇ってくるのを感じた。
ジェームズがリーマスの隣で苦笑を持らし、眉を下げて微笑みながら俺に視線を向けた。
それすらもむかついてしまうのはとりあえず今、この状況下なのだから許して欲しい。
「ホグワーツ内のある人物にその言葉を言ってもらわないと外れないんだよ。」
「な・・・誰だよ!?」
「さぁ?わかんない。
しもべ妖精に3番目に会った人にシリウスのご主人様vって書いた紙渡してっていったから。」
俺の怒りにもなれてきたのか、とてもわざとらしくジェームズは息を吐いて肩をすくめて見せる。
リーマスなんてもう既に興味がないのか、ローブを着替え始めた。
ピーターだけがびくびくとおびえている。多分、この中で一番まともなのはピーターだろう。
俺も俺でまともではないかもしれないが、この悪友二人よりかは大分まともだと思う。
「そいつ探せってことか?」
「そういうこと。」
ジェームズが笑顔でそう返し、俺は深く溜息をついた。
確実に嫌な一日が幕を開けた。
◇◇◇
ホグワーツがいくら涼しいところに位置しているとはいえ、
この暑い季節にハイネックなど着る気もおこらず俺は普通に制服を着ることを余儀なくされた。
つまり、首輪が誰の目にでも触れてしまうということで、辺りからの視線が随分といたい。
よからぬ妄想でも膨らましているのか
俺の横を通り過ぎたレイブンクローの女子が頬を赤く染めて走り去っていく。
・・・間違っても俺はそういうプレイは好みじゃない。
いや、するほうはいいかもしれないけど、されるのはいやだ。
悪友達3人と大広間にたどりつき朝食をとろうと席に着くと、
目の前に人形のように美しい顔があった。
そいつは一瞬驚いたように強い光を持つ金色の瞳を大きく開いたが、
すぐに楽しそうな笑みを口元にのぼらせた。
「今度の女はそういうプレイがお好みなのか?」
じっと睨み付ける様に見てやるとはおどけたように肩をすくめ
目の前の皿から目玉焼きをとった。
「おはよう、、フランツ。」
「おはよう!我が愛しの君達!」
「お、おはよう。」
悪友達が白い髪の美貌の友人と金色と紅茶のような瞳を持つ友人に声をかける。
フランツが少し照れくさそうに控えめに微笑んで、はにかっと微笑みの形をつくった。
「おはよう。みんな。」
「リーマス、馬鹿、ピーター。おはよう。」
「馬鹿って僕のことかい!?」
「それ以外誰がいんだよ。」
ケタケタと笑うの隣でフランツが困ったように微笑みながらの袖を引いていた。
俺は友人達の話を聞き流し溜息をつきながら目玉焼きをとろうと皿にフォークを近づけた。
だが、その瞬間びりびりと首輪に刺激が走り、それと同時にフォークがはじかれた。
す、と目線をあたりに向けてみると驚いたような同室の悪友達の顔と焦りを覚えているようなフランツの瞳。
そして、悪戯気に輝いている金色の瞳だった。
は杖を俺のほうに向けてただにっこりと微笑む。
「今日、一日犬なんだってな?シリウス。
じゃぁ、お前の飯は犬らしく・・・これのみ。」
すっと杖を振っては少し遠目の皿から骨付きの肉を俺の皿に持ってくる。
ちなみに一つではない。数にして6個。俺に朝からこんなに喰えと?
眉根を寄せて怒りを滲ませた瞳でを見ると、は可愛らしく首を傾げてみせる。
「・・・・・・君?」
フランツがの袖を掴んで、の名前を呼ぶ。
眉が下がり、どこか瞳が揺れて、冷や汗をかいている。
なんだかソレが妙に不憫に見えた。
いや、いま一番不憫なのは俺のはずなんだけど
そこはフランツの力といったとこだろうか。
も眉を下げて困ったような笑みを浮かべてからフランツの頭を撫ぜる。
「フランツ・・・お前は気にすんな。
犬は犬らしくあるべきなんだぜ?」
「なんだよ、それ。」
超低音でうなるようにいってやるとは華やかな笑みを俺に向けた。
「今日は休みだし、飯喰ってさっさとご主人様探したらどうだ?」
「・・・ちっ。」
ソレがあまりに正論で俺は返す言葉を見つけ損ねた。
◆◆◆
「・・・なぁ、もしかして俺の主人になってねぇか?」
3人目といえどもしもべ妖精が紙を渡した相手は
グリフィンドール生であるという可能性が高いので
俺はグリフィンドール生一人一人にそんな質問をして回っていた。
頬を赤らめるヤツやあからさまに頭おかしいのじゃないか。とでも言いたげに眉を顰めるヤツがいて
俺は”ご主人様探し”を今すぐにでも投げ出したい気分になっていた。
「・・・なってない」
今回の相手は一つ上の男子生徒。
明らかに嫌そうというか引いた顔をしてそいつはそういう。
「そうか。悪いな。」
俺のその言葉にそいつは小さく頷いてその場を離れた。
グリフィンドール生ほとんどにはこれで聞いた気がする。
俺は空を見上げて溜息をついた。
首輪をつけた張本人であるリーマスとジェ-ムズに
ついて来いといったのだがなにかと理由を付けられ断られた。
ピーターはあまりに小刻みに震えていたので不憫になって強制するのを止めておいた。
だから今は一人で質問中。ものすごい屈辱的な気分になる。
ファッションだといってつけておくのも別に悪くないかもしれないけど
それでは悪友二人に負けたことになるから、それはどうしても避けたかった。
「よー。ぼんぼん。」
突然聞こえた声の元を探して視線を彷徨わせると木陰の下で本を読んでいるの姿が認められた。
一陣の風が吹き、さらさらとの透けるように白くて長い髪を揺らす。
それと同時に香水などの類ではない甘い独特の香り。
引き込まれるかのようにそちらに近づき、俺はの隣に腰を下ろした。
どうやら予想以上に疲れていたらしく、
座り込むと何かが体から抜けていくような気がして、再び動く事が随分と億劫に感じられた。
「どうだ?ご主人様みつかったか?」
「嫌味か、ソレ?」
「さぁ?」
が微笑みながらきょとんと首を傾げると肩から一房の白い髪がするりと落ちる。
俺は息を吐いての肩に頭を預けた。理由は無い。なんだかそうしたくなったから。
休日だというのに平日よりも異様に疲れたような気がする。
「お疲れか?」
そう言いながらは俺の喉元を細長い指でわさわさと撫ぜた。
怪訝に眉を顰めての手を振り払う。
いつもなら頭を撫ぜてくるのにどういうことだ。
そして、それと同時にに頭を撫ぜられる事を期待していた自分に腹が立つ。
「なんだよ。」
「んー?ここに書いてあんだよ。犬の撫ぜ方。」
ほら。と言いながらが目を落としていた本を指差す。
そこには確かに犬の撫ぜ方について表記されていた。
「おまっ・・・!何の本読んでんだよ!?」
「”わんこの飼い方”だけど?
あ、ちなみに学校の図書だから破いたらマダムに怒られんぞ?」
思わずから本を引ったくり二つに引き裂いてやろうという体制をとった時に
微笑みながらにそういわれて、俺は動きを止めた。
「お手とかやっぱ餌で調教すんのが手っ取りばやいみてぇだぜ?」
「ソレを俺にいってどうするんだ。」
本の形が変わりそうなぐらい本を握り締めて俺は口の中で呟く。
が楽しそうに微笑み、俺の頭を撫ぜた。
「ほら、お手。」
手を置けといわんばかりには俺の前に手を差し出す。
なんだかこめかみが引きつってきた。ぴくぴくと痙攣を始めている。
「するか!」
「えー。しようぜ。」
が逃げようとする俺の手をとって無理矢理彼の手の上に載せる。
ぴくぴくと口元が引きつる。右の拳に力がこもってきた。
「よくできましたー。」
俺の右腕を目の端で捕えてから、がなぜか妖艶な笑みを浮かべて俺を下から見上げた。
壮絶な色気に当てられて俺は一瞬動きをとめ、力を抜いた次の瞬間、
俺の頬には唇を落とした。
「!?」
を突き放すようにして離れ俺は頬を片手で押さえて口をパクパクとしてみせる。
「お前、なにすんだ!?」
「なにってちゅーじゃん。」
いや、突拍子もない行動をこいつが起こす事なんて今に始まった事ではない。
頬にキスされるなんてもう何度もあったこと。
だが、やはり慣れないものは慣れないことで俺の頭のなかはぐるぐると渦巻いていた。
ふ、と俺の足元に陰ができて顔を上げるとがとても楽しそうに微笑んでいた。
なんだかこの状況が耐え切れなくて一歩足を引いて離れようとしたが
も此方に近づいて、結果的に距離はなんら変わらなかった。
「よーし。じゃぁ・・・」
すっとの細くて長い指が首輪にかかり、息を飲み込む。
長い睫毛が影を落とし、その下から金色の強い光が俺の瞳を見上げる。
「おすわり。」
が言葉を言い終わった瞬間、パリンっと硝子が壊れるような音がして
俺の首元からさらさらと砂のようなものが落ちていった。
「は?」
がきょとんと目を丸くして俺の首元を触る。
俺も同じように自分の首元に手を持っていく。
そこには朝から鬱陶しくてたまらなかった首輪の存在はなくなっており
いたって普通の肌の感触だけがある。
「あれ・・・?」
が不思議そうに首を傾げるが、答えはタダ一つ。
俺の首輪を外せるのはご主人様のおすわりという言葉のみ。
「お前が俺の主人だったのかよ・・・!」
「・・・あ、ばれた?」
今にも、えへvとでも言い出しそうには頬に手を当てて微笑んだ。
「てっめぇ・・・!」
「やだぁ、シリウス君怖ーい。」
気色悪い声音のそれに握り締めた拳をそのまま振り落とそうとすると
はひらりとそれをかわし、そこから走り去った。
「あ、おまっ・・・!待て!」
「待てっていわれて待つやつがいるかよ!」
それから暫く校内を走り回ったんだけど結局俺だけフィルチに見つかって
罰則終わってから部屋に戻るとがリーマスとジェームズと一緒に微笑んで俺を出迎えた。
実は発案者はでどうやら悪友達とはグルだったらしいと聞いたのはそれから数秒後。
(リクエスト:もも 様)
2006/07/13
アトガキ
ね、ほぼ虐めだよね。そしてものすごく楽しかった(笑)
シリウスはやっぱりやられキャラがあうのか・・・?
発案者だけどキーワードについては主人公さんと悪戯仕掛け人の間で
意思の疎通がうまくできてなかったとかいう設定です。
しもべ妖精に紙渡したとか言うのはジムの嘘です。
もとから主人公さんがご主人様な計画だったので。
ここで裏設定かたんな。って話ですが(笑)
主人公さんがシリウスで遊ぶのは
こんな感じでよろしかったでしょうか?シリウス不憫すぎ?
かなり愉しんで書かせていただきました(笑)
もも様リク有り難うございました!